はじめに
2歳の子どもたちは、世界中で「テリブル・ツー(恐るべき2歳)」「リトル・モンスター」「魔の2歳児」などと呼ばれています。
日本でも「イヤイヤ期」という言葉、よく耳にしますよね。
それにしても、2歳の子どもたちの何が、そんなに大人を困らせるのでしょうか?
実は、幼稚園での「2歳児の保育」と一口に言っても、その形は園によってさまざまです。
満3歳のお誕生日から通うクラス、長い時間お預かりするクラス、親子で参加するプレ保育、子どもだけで週に数回通うプレ保育、一時預かり…。
さらに、2歳児クラスを始めたばかりの園もあれば、20年以上続けている園もあります。
ですから、同じ「2歳児クラス」のお話をしているはずなのに、幼稚園の先生同士でも話がかみ合わない…ということが、時々あるんですね。
そこで今回は、「2歳児の育ちの特徴」に目を向けて、「2歳児らしさ」について一緒に考えてみたいと思います。
先にお伝えしておくと、2歳児は「幼児クラスの小さい版」ではないんです。
「イヤ!」は、生まれて最初に覚えた気持ちの伝え方
赤ちゃんは、自分で食べ物を獲ることができません。
おうちの方が口に運んでくれるものを食べながら、大きくなっていきます。
自分で食べ物を選べないからこそ、もし傷んだものや体に悪いものが口に入ったときには、自分で吐き出して身を守る必要があります。
そのため、小さな子どもの舌は、酸っぱい味(傷んでいるサイン)や苦い味(毒のサイン)にとても敏感にできています。
赤ちゃんがそんな味を感じると、すぐに「ベーっ」と出してしまうのは、そのためなんですね。
つまり、赤ちゃんが生きるために一番はじめに覚える意思表示は、「イヤだ!」から始まるのです。
お腹がすいたとき、おむつが気持ち悪いときに泣いて知らせるのも、同じことだと言えるでしょう。
そして2歳前後になると、体がぐんと成長し、自分の行きたいところへ歩いていけるようになります。
それにつれて、心も「自分でやりたい!」という自立に向かって育ち始めます。
そのとき子どもたちは、いちばん使い慣れた方法で、自分の気持ちを表そうとします。
そう、それこそが「イヤ!」なのです。
「イヤ!」が続くと、大人はついイライラしてしまいますよね。
でも、「まだほかの伝え方を知らないだけなんだな」と思えると、成長の一場面として、少しうれしい気持ちで受けとめられるのではないでしょうか。
「自分の思いを、自分で伝えたい!」
そんな子どもたちの気持ちに、ゆったりと寄り添ってあげたいですね。
「ジブンで!」と「やって!」を行ったり来たり
2歳の子どもたちは、「イヤ!」だけでなく、
「ジブンで!」「ボクが!」「ワタシの!」
と、なんでも自分でやりたがる時期です。
「できる!(つもり)」の自信いっぱいで挑戦するのですが、実際にはまだ一人では難しいこともたくさんあります。
そして、思うようにいかないと…さっきまでの勢いはどこへやら、急に「やって〜!」と頼ってくることも。
こうして、
「ジブンで!」(自分でやりたい気持ち)と「やって!」(安心したい気持ち)
の間を行ったり来たりしながら、少しずつ自立へと歩んでいくのです。
気持ちのコントロールもまだ難しい時期ですから、泣いたり怒ったりしながら「やりたい!」「やって!」を伝えることもあるでしょう。
そんなとき、まわりの大人がゆったりと構えて、どちらの気持ちも受けとめてあげられると、子どもたちは安心して自分を出しながら育っていくことができます。
反対に、この時期に「早くクラスをまとめなきゃ」「きちんとさせなきゃ」と、自己主張を抑える方向で関わってしまうと…。
4〜5歳になって、話し合いの場面で先生が「自分の考えを聞かせてね」と願っても、なかなか自分の言葉で話そうとしなくなってしまいます。
「自分の気持ちを言うのはダメなことなんだ」と思い込んでしまうからです。
だからこそ私たちは、2歳児を「幼児の小さい版」ではなく「幼児の入口」として、その特徴をよく理解し、根気強く受けとめていきたいと思っています。
からだ・ことば・おともだち ぐんぐん伸びる2歳の力
ほかにも、2歳の子どもたちには、こんな育ちの特徴があります。
からだ:動くことが楽しくてたまらない!
- 走る・跳ぶ・登るなど、全身を使った動きが活発になります。
- 手先も器用になり、スプーンやクレヨンなどの道具が使えるようになります。
- トイレや食事、お着替えなども、少しずつ自分でやろうとします。
- 「動きたい!」気持ちが強くなるので、大人がケガへの気配りをしてあげることも必要です。
子どもは小さなケガを経験しながら、大きなケガをしないよう、自分で自分の身を守る力をつけていきます。
「ケガをゼロに!」を目指すのではなく、子ども自身が気づける小さな危険は経験として大切にし、子どもには見えない大きな危険は大人が先回りして取り除く。
そんな考え方で、園の環境を整えています。
ことば:「なんで?」「これなに?」がいっぱい
- 「ママ きた」「ワンワン いた」のような、二つの言葉をつなげたお話が出てきます。
- 言葉のやり取りが楽しくなり、「なんで?」「これなに?」が増えていきます。
- 大人の言葉をよく聞いて、まねしながら覚えていきます。(1歳半〜3歳頃は、言葉がぐんと増える時期です)
- 気持ちを言葉で伝える力が育ち始めますが、まだうまく言えずに泣いてしまうことも多いです。
そんなときは、大人が「〇〇したかったんだね」と気持ちを言葉にしてあげることで、少しずつ自分の気持ちを言葉で表せるようになっていきます。
おともだち:「おなじ」がうれしい
- おともだちへの興味が出てきますが、まだ同じ場所でそれぞれに遊ぶ「となり同士の遊び」が中心です。
- おともだちの遊びを見てまねしてみる姿が少しずつ増え、「おなじが嬉しい」という気持ちが芽生えてきます。
- ごっこ遊びの中で、好きな人への「どうぞ」「ありがとう」が出てきて、同じやり取りを何度も繰り返して楽しみます。
そんな繰り返しの遊びに、何度でも付き合ってくれる大人がいること。
それが子どもにとって「自分は大切にされている」という安心の土台になります。
信頼できる先生との関係の中で、おともだちと関わる力が育っていくのですね。
3歳を迎える頃になると、まわりの子の動きや気持ちを、まるで自分のことのように感じて、一緒に反応する姿が増えていきます。心が動けば体も動く!ノリのよさで、少人数のにぎやかな遊びが生まれるようになります。(まだ短い時間のことが多いですが)
たとえば…ひとりが立ち上がって走り出すと、続いて2〜3人が同じように走り出し、笑顔と歓声があふれてくる。そんな微笑ましい姿が見られるようになります。
おともだちとのぶつかり合いも、大切な出会い
2歳の子ども同士、「ジブンが!」と「ジブンが!」がぶつかれば、トラブルになることもあります。
特に多いのが、おもちゃや場所の取り合いです。
まだまわりの子の存在をうまく意識できないため、自分がおともだちのものや場所を取ったことに気づけません。
でも、取られた方は「とられた!」と感じますから、「イヤ!」という言葉だけでなく、押す・噛む・ひっかくなど、さまざまな方法で気持ちを表します。
これが、2歳児のトラブルの特徴です。
ですが、それもおともだちという存在に出会う、大切な機会です。
「好き」と「イヤ」は、実は表裏一体。
こうして関わり合うことが、仲良く遊べるようになる第一歩なのです。
園では、先生が間に入り、二人それぞれの気持ちを受けとめて言葉にしながら、二人の間をとりもつようにしています。
それでも同じ組み合わせでトラブルが続くときは、ちょっとひと工夫。
たとえば、二人とも同じおもちゃや遊びコーナーが大好きで、近くにいるからこそぶつかってしまう場合。
そんなときは、同じおもちゃやコーナーを、別々の場所に二つ用意するのです。
そうすれば、それぞれが満足するまでじっくり遊べて、同じトラブルを繰り返さずにすみます。
遊びながら二人の成長を待ち、ぶつからなくなったら、またコーナーを一つに戻せばいいんですね。
おわりに ~2歳児らしさとは~
2歳の子どもたちは、「自分の思い通りに動きたい!伝えたい!」という強い気持ちをもちながら、まだ気持ちや行動を調整する力が育ちきっていない時期です。
そんな2歳児の育ちを支えるために大切なのは、まわりの大人が安心できる存在になること。
そして「自分でやってみたい!」という思いにゆったり寄り添いながら、
・「自分でできた!」と思えるように、そっと手助けすること
・やりたいことを思いきりできる環境や機会をつくること
・ときには、じっくりと待つこと
・気持ちを言葉にしてあげること
だと思います。
2歳児の「イヤ!」や「ジブンで!」を抑えつけるのではなく、やわらかく受けとめて導いていく。
そうすれば、きっと「幼稚園大好き!先生大好き!」な子どもたちに育っていきます。
